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こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.41]安全で、愛されるケーブルカーをめざして。 ~ロープ交換工事から車両デザインの一新まで舞台裏を追う~

国宝・石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)への参道となる男山ケーブルが、2001年に車両および巻上装置を新しくして以来、18年ぶりにリニューアルしました。2019年5月にケーブルカーの命綱ともいえるロープ交換をはじめとして、巻上装置の制御装置や誘導無線を更新。そして6月には車両デザインを一新し、外観・内装とも新たな姿でお目見えしました。安全性の向上を目的に行われた今回の大刷新の模様をレポートします。

絵葉書資料館蔵

“やわたのはちまんさん”への
参道として開業した男山ケーブル

京都府八幡市内で八幡市駅と男山山上駅を片道約3分で結ぶ男山ケーブルは、1926年に男山索道株式会社によって開業しました。古来、“やわたのはちまんさん”と親しまれ信仰を集める石清水八幡宮への参道として敷設されたものです。戦時中の資材供出のため1944年に一旦営業を停止したものの、1955年に京阪電気鉄道の直営路線として復活。当時の車両はグリーンのツートンカラーでしたが、1968年に特急色に変更し長年親しまれてきました。

伊勢神宮に次ぐ国家第二の宗廟、石清水八幡宮は国宝へ

石清水八幡宮は、京都府の西南に位置する男山の山上に鎮座します。麓では木津川、宇治川、桂川の三川が合流し、この地は、いにしえより交通の要衝として重要視されてきました。また平安京の裏鬼門にあたり、鬼門となる比叡山延暦寺とともに都の守護、国家鎮護の社としても篤い信仰を集めてきました。本殿は現存する八幡造の中で最古かつ最大規模を誇り、2016年にはその完成度の高い神社建築が評価され、本社10棟と附棟札3枚が国宝に指定。また、足利、織田、豊臣、徳川といった名だたる武将から崇敬された勝運の神さまとしても知られ、現在でも必勝祈願や厄除け開運を求めて参拝する人が多くいらっしゃいます。

7年ぶりに行われたロープ交換に密着

普通の電車では走れないような山の急勾配を、ロープ(鋼索)を使って運転するのがケーブルカーです。男山ケーブルでは、直径34mmの鋼鉄製ロープ1本の両端に車両が取り付けてあり、そのロープで車両を井戸のつるべのように男山山上駅の巻上装置で運転しています。いくら鋼鉄製の頑強なロープといえども、重量のある車両を支えることを繰り返すうちに徐々に伸びてきてしまいます。そのため1年に1度は伸長部分を切断する作業を行いますが、およそ7年に1度はロープそのものを新しいものに取り替えます。今回は2012年以来となるロープ交換工事に密着しました。

山の急勾配、足場の悪い現場にて丸1日がかりで実行

ロープ交換工事は、山の急勾配での作業になり重機などを使用できないので、すべてを人の手によって行わなければなりません。ロープは麻布を芯にして鋼鉄の束6本がしめ縄状に編み込まれており、1メートルあたり5kgほどの重さに。1号車と2号車をつないで運転するために必要な500メートル分では約2.5トンもの重さになります。ロープも車両も重量物であるため作業には細心の注意を払う必要があります。この新しいロープを軌道上の滑車へ誘導する際に使う道具は、エジソンが電球に使用したことで有名なここ八幡ならではの青竹。地元で調達できる部材をうまく利用するところにも、長年培われてきた京阪の技術者達の匠の知恵を感じました。

まずふもとの駅で新ロープをケーブルカーにつなぎ、作業現場である山の中腹まで運転して引き上げます。鋼鉄のロープは重くはずれると危険なため、新ロープを引き上げる作業は一秒間に10cmと超スローペースで車両を動かし慎重に進めていきます。次に新旧のロープをつなぎ交換していきます。
ケーブルカーのロープ交換は専門の会社に依頼するのが一般的ですが、京阪電車では、日常的な保守・点検から大掛かりなロープ交換に至るまで、すべて自社で行っています。だからこそ災害が発生しても、自分たちの手で責任をもって対応できる。京阪の安全安心は、自らの手で築きあげる。この自負こそが、技術者全員の胸に宿る誇り高き京阪スピリッツです。

高い技術を継承していく。その絶好の機会

新旧ロープの交換が終わると、ちょうどいい長さに新ロープを切断します。そしてロープの先端にソケットを取り付け、500℃に溶かした亜鉛を流し込みます。自然冷却して固定されたソケットを車両に接続したら最後は試運転です。ロープ交換の工程は約180もあるため、工事は朝7時半から夜22時過ぎまで、山の急勾配で丸一日かけて行われました。
今回のような7年に1度のロープ交換の現場は、継承してきた高い技術を次世代に伝える絶好の機会でもあります。過去の写真や映像を用いた研修で、事前にシミュレーションを行います。入念な準備を経て臨んだ工事当日は、ベテランと若手が息もぴったりに力を合わせ難作業を滞りなく遂行しました。

6月19日、車両が新デザインにリニューアル

今回のリニューアル工事では、制御装置の更新やロープ交換などの安全性向上を目的とした更新工事に加え、車両デザインの刷新にも取り掛かりました。そして完成した新車両は2019年6月19日に運行開始となりました。コンセプトは「陽(赤)の遣い」と「月(黄)の遣い」。片方が昇ると片方が下るケーブルカーを「太陽」と「月」に見立てて、陽のひかりと月のひかり、石清水八幡宮の社殿の朱と金、京阪特急伝統の赤・黄の組み合わせが全体を貫くデザインモチーフです。日本の伝統色を思わせるシックで落ち着いたカラーリングで、石清水八幡宮との一体感のある美しい和のデザインに生まれ変わりました。

新たに愛称を設定。陽(赤)は「あかね」、月(黄)は「こがね」

陽(赤)は「あかね」、月(黄)は「こがね」と、対になるひかりを車両の愛称として新たに設定しました。愛称の書体は、石清水八幡宮の田中恆清(たなかつねきよ)宮司に揮毫していただいたもの。側面の模様は、男山の神秘感と歴史の積層、車両が上昇する感じをイメージしたオリジナルの霞文様が採用されています。

外装と一体感のある内装、顔となるシンボルマークも登場!

内装は、外装デザインと同様に赤と黄の色相をモチーフに、扉、座席を左右で切り替えるデザインとすることで、出入り口方向の案内機能も考慮。座席表地には、外観側面に配したのと同様のオリジナルの霞文様を取り入れ、外装・内装で一貫性のある世界観を表現しています。シンボルマークは神のつかいとされる「阿吽の鳩」、御神紋「流れ左三つ巴」。石清水八幡宮を象徴する二つの要素をモチーフにしています。

この新デザイン導入により、石清水八幡宮への参道ケーブルカーとしての個性と特色がいっそう際立つようになりました。国内外から訪れる参詣者の方々に、ケーブルカーに乗車した瞬間から石清水八幡宮を感じていただける存在として、末長く愛されることを願っています。

石清水八幡宮参道ケーブル、駅名も新しくなります!

2019年10月1日から、ケーブルの通称が男山ケーブルから「石清水八幡宮参道ケーブル(略称:参道ケーブル)」に変わります。駅名も、八幡市駅は「ケーブル八幡宮口(はちまんぐうぐち)」駅に、男山山上駅は「ケーブル八幡宮山上(はちまんぐうさんじょう)」駅にそれぞれ変更されます。駅名変更にあわせて両駅舎もリニューアル。
また同時に京阪線の八幡市駅も「石清水八幡宮」駅に改称される予定です。

2019年8月掲載

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