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こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.33]電車の安全運行を根底で支える保線業務。~線路を守ることは、運行を支えること~

電車の重量は、1両あたり30トン前後、お客さまが乗車されると40トン近くに及びます。それだけの重さのものが1日に何百回と走行する線路は、次第にゆがみが生じたり、バラスト(枕木を支える砕石)が細かく砕けることで沈下するなど、徐々に変化していきます。電車が安全に、乗り心地良く走行するためには、車両はもちろん、線路が常に良い状態に保たれていなければなりません。そこで、日々線路の状態を点検・補修する“保線”という業務が不可欠になります。京阪電車の安全をいわば根底から支える保線業務、その任にあたるのは工務部保線課です。今回は京都保線係に密着して、どのように線路の安全が守られているのかをレポートします。

保線の要は、目視による点検

京都保線係が担当するのは、京阪線のうち、御殿山駅・牧野駅間から出町柳駅までの区間に加え、宇治線、男山ケーブル、そして淀車庫線の計93.473単線km(※線路の長さの合計)。これらを3班・21名で担当しています。カバーする全線路の状態を常に把握し、逐次点検・補修を行います。その根幹をなすのが、線路上をくまなく歩いてレールの傷や摩耗、ゆがみなどを丹念に細かく確認する線路巡視です。

「ご安全に!」の掛け声とともに1日がスタート

線路巡視は10日サイクルで担当エリアを一巡します。実際に線路の上を足で歩き、目で見て、耳で聞いて、手で確かめることで小さな異常も見逃しません。また、線路だけでなく周辺の環境まで、わずかな異変にも目を光らせます。保線の要ともいえるこうした線路巡視を含め、保線業務は電車が運行している線路上で行うため、安全には十分な注意が必要。毎朝一番にミーティングでその日の作業内容と注意事項を確認しあい、「ご安全に!」の掛け声とともに現場へ向かいます。

危険と隣り合わせ、
だから複数人のチームで作業

日中に行う保線業務は、電車が運行しているさなかに行うため危険と隣り合わせ。そこで、必ず複数人で業務にあたります。そのうち1人は列車監視員。電車の接近を他のメンバーに知らせます。作業員は、その指示に従いながら、安全・確実に作業を進めます。取材した日は3人でチームを組んで、宇治川橋梁付近に赴きました。

プロの勘所が発揮される保線業務

到着早々、さっそく歩きながら枕木の状態や、レールに傷がないかなどを入念に調べます。この日は橋梁での作業だったので、橋梁と枕木をつないでいるフックボルトも確認。レールを枕木に取り付けている接続部分では、ハンマーで叩いて音をチェックします。経験を積むと、この打音により接続箇所のボルトが緩んでいることを瞬時に察知。気になる部分があれば、すみやかにスパナで修繕していきます。こうしたプロの勘所を身につけるには、最低でも3~4年はかかるとされます。これが、保線が経験工学と呼ばれるゆえん。正確・安全に保守する高い技術は、現場で経験を積むことでしか得られません。京阪電車では、こうした卓越した知見と技術が、現場を舞台に次世代へと着実に継承されています。

鋼鉄製のレールは、夏と冬では気温の違いによって伸縮が生まれます。そのために継ぎ目には微妙な隙間を設けていますが、適切な隙間が保たれているかも丹念に調べていきます。また、軌間水準測定器といういわば線路専用の定規で、左右レールの間隔や高さ、平面性などに問題がないかもチェック。こちらも経験を積むことで、レールギリギリに顔を近づけ、そこから目視するだけで、線路の波形や1センチに満たない高低差にも気づくといいます。
付近では現在、年間の修繕計画に沿ったバラストや枕木の交換工事が行われており、ちょうどこの日は軌道整備を実施していました。こうした工事では協力会社の力も借りています。また、大がかりな作業となるレール交換などは、お客さまのご利用にご不便をおかけしないよう、終電から始発までの間の深夜の短い時間を活用して工事を行っています(こころまちレポートVOL.11「安心、安全、そして快適な明日をつくるために。」)。

線路の安全をこれからも
自分たちの足と、目と、手で守り抜く

1日の取材を終えて、最後に工務部保線課京都保線係の谷掛係長にお話を伺いました。

線路上を隅から隅まで歩いて、本当に丹念に点検されるのですね。

10日に一度の徒歩による巡視のほか、電車の運転室に同乗して線路の状態をチェックする巡視は毎日行っています。また、線路の状態を検測する軌道検測車は2ヵ月に一度、深夜に京阪線全線を走り、検査しています(こころまちレポートVOL.20「夜間に京阪線全線を走る、もうひとつの京阪電車。」)。こうした二重三重のチェック体制を敷いて、安全な列車運行の土台となる線路の管理を徹底しています。

豪雨による河川増水に対応するための洗掘対策(橋脚補強)工事も行われていました

高性能な軌道検測車で調べていても、人の目で確認することが必要なんですね。

「軌道検測車は短時間で大量のデータを記録することができるので、非常に有用です。が、実際に保守するのはあくまで我々人間です。さらにいえば、点検においても人でないと…という部分はあります。そのあたりは医療現場とも似ているかもしれません。いくら最新の医療機器が揃っていようとも、お医者さんによる診察は欠かせませんよね?機器のデータを読み取るのも人ですし、顔色を見て、触診をして、病気や不調の兆候を読み取る、それができるのは人だけです。また、線路周辺の環境については、我々が実際に歩いて、目で見て、確認することが重要です。とくに最近のように異常気象が多いと、そのことを実感します。梅雨前には土嚢(どのう)を迅速に積む訓練や、有事の際に即座に対応するための緊急連絡網の整備、災害に備えた詳細なマップの準備など、万が一への備えは万全にしています。」

工務部 保線課 谷掛係長

今後の目標や、めざすところはどこにありますか。

「線路の安全をこれからも自分たちの足と、目と、耳と、手で守り抜く。その想いは保線課全員変わりません。使命をきっちり果たしながら、沿線のお客さまに愛される鉄道会社でありたいと思います。京阪電車は住宅街のすぐそばを走る地域密着型の鉄道会社です。線路を歩いてチェックしていると、沿線の方によくお声をかけていただけるんですよ。その意味では、私たち保線課は沿線のお客さまの一番近くにいる存在だと感じています。夜間工事などの際には騒音が出ないように配慮していますが、それでもご迷惑をおかけすることもあると思います。でも、線路を良好に保つことは、安全な運行に欠かせないことに加えて、乗り心地の良さや周辺への騒音・振動の軽減にもつながります(CORPORATE REPORT「京阪電車の騒音振動低減に関する取り組み」)。どうかご理解いただいて、温かく見守っていただけたらありがたいです。沿線の皆さまに、安心してご利用いただける京阪電車であり続けるためにも、これからもチーム一丸となって保線業務に全力を注いでいきます。」