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こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.48]愛された車両が新SANZEN-HIROBAへ。~5000系復刻プロジェクトとSANZEN-HIROBAのリニューアルを結ぶ~

京阪電車は、技術力にチャレンジ精神と創造性を加えて、鉄道史に残る車両やサービスを数多く生み出してきました。1970年に登場し、通勤・通学のための車両として皆さまから愛されつつ引退した5000系車両も、「既成概念にとらわれない自由な発想と挑戦」「職人技が生きる創造性」という、京阪ならではのスピリッツを凝縮した車両でした。今回は、5000系車両を登場時の姿に戻し、KUZUHA MALLのSANZEN-HIROBAに展示して新しい命を吹き込むまでの取り組みを取材しました。5000系復刻プロジェクトとSANZEN-HIROBAリニューアルの2つを結んでリポートします。

「お客さまのために」のスピリッツが詰まった5000系車両

5000系車両が誕生したのは、1970年代にさかのぼります。日本は高度成長期にあり、京阪線でも1963年(昭和38年)に淀屋橋地下延長線の開業もあって、お客さまは増加の一途をたどっていました。また、8両以上の増結には長い準備期間を要し、運行本数を増やすためには停車時間の短縮が必要という中で、ラッシュ時には5扉で、それ以外は天井部に収納した座席を下ろし3扉で運用して座席数を増加するという斬新なアイデアを採用したのが5000系車両でした。

それにより、輸送力の向上とサービスの維持を同時に実現。当時、ドア数が5扉以上の多扉車は日本初であり、また、天井部から座席が昇降する様子がユニークだと注目を集めました。登場以来、通勤・通学の混雑対策に大いに貢献し、活躍してきた5000系車両でしたが、可動式ホーム柵への対応の難しさもあって2018年から順次引退へ。2021年9月に最後の1編成が引退となりました。

5000系車両には、乗り心地や走行性の面でも新たな機能がたくさん搭載されました。多扉車は外気が頻繁に入るので車内の冷暖房を強化。さらに、ドアエンジンが多いことに加えて、座席の昇降装置(日本初)、増強された冷暖房装置などで機器重量が増加したため、車体に京阪電車で初めてアルミニウム合金を採用し軽量化をかなえました。

「5000系復刻プロジェクト」がスタート!

時代をリードした画期的な技術を有し、沿線のお客さまにも永らく親しまれた5000系車両。その車両をこのまま廃車してしまって良いのか。検討を重ねた結果、多くの方々に引き続き親しんでいただけるように保存しよう!そして、役割を終えた車両をそこで終わらせず、KUZUHA MALLのSANZEN-HIROBAに展示し、京阪のDNAとして次世代にも伝えていこう!という熱い思いから、展示に向けた「5000系復刻プロジェクト」が始動しました。

部品も塗装も初代へと戻していった

KUZUHA MALLのSANZEN-HIROBAに展示するために、5000系車両をできる限りデビュー当時の姿に戻そうと決定したのは2022年6月27日のことでした。そこから、新造当時の図面を探したり、かつて使われていた機器や部品を探す日々が始まりました。
そして2022年10月6日、5551号車の床下機器類や連結幌(れんけつほろ)などを寝屋川車両基地で全部取り外してから、展示するサイズに切断。2ヵ月をかけて内装や機器類などをデビュー当時のものに入れ替えながら初代の姿に戻していきました。2023年1月に入り、いよいよ最終段階の塗装へ。当時の色に戻すため塗り直しをする作業を進め、点検と調整を繰り返して、ついに2月7日に復刻車両が完成しました。

完成!そして、新しい命を得る舞台へ

復刻した5000系車両は、同じく通勤車両として今も現役で活躍する2600系、当初より展示されてきた旧3000系とともに、KUZUHA MALLのSANZEN-HIROBAで展示されることになりました。「タマゴ型」の顔が印象的な2600系は、その個性的な部分をカットして持ち込まれます。5000系と2600系は2月8日朝から丁寧に梱包され、搬送車両に積み込まれて深夜に寝屋川車両基地を後にしました。その後、いよいよ両車両はSANZEN-HIROBA内へ。16tフォークリフトや中低床トレーラー、電動チルローラーなどさまざまな機器を駆使して搬入作業を行いました。カットされた短い車両とはいえ、室内施設に入れるには天井高などを考えても電車の存在感は十分過ぎるほどです。作業に携わるスタッフ全員が力を合わせて取り組み、ようやく搬入が完了したのは夜も明けようとする頃でした。

設置スペースに運び入れてからは、ジャッキを使って5000系の車両と台車を合体させる大仕事が待っていました。本来はクレーンなどを使用して行う大規模な作業ですが、室内のためすべての工程は手動で行われました。車両のプロたちが職人技を発揮し、幾人もの人の手によって無事に設置が終了しました。

KUZUHA MALL「SANZEN-HIROBA」
4月21日リニューアルオープン!

復刻版5000系と2600系車両を追加展示することを機に、KUZUHA MALLのSANZEN-HIROBAは、新しく生まれ変わりました。お客さまが集う憩いと賑わいの空間であることに加えて、本物の車両が3つもそろうという実物の価値を活かした躍動的な演出をたっぷりと楽しんでいただける体感型空間の魅力も備えます。また、お子さま向けのイベントの開催を充実させるなど、あらゆる面で「何度でも訪れたくなる空間」を目指して進化します。創意工夫を重ねてきた京阪電車の技術やサービスに楽しく触れ合えるさまざまなコンテンツも積極的に発信していきますので、どうぞご期待ください。

日本の広域型ショッピングモールの先駆けとして1972年に誕生したのが「くずはモール街」です。それが、KUZUHA MALLとして発展し、SANZEN-HIROBAは、2014年3月の第2期リニューアルに伴って開設されました。その際に、5000系車両同様に当時の最先端の技術力や企画力を活かして大人気だった旧3000系車両のテレビカー1両が展示されました。この経緯は、こころまちつくろう活動レポートvol.12 『みんなの心がこもった車両を、新しいKUZUHAへ』こころまちつくろう活動レポートvol.13 『受け継ぎ、そして生まれ変わる』でお楽しみください。

沿線の皆さまに愛される広場づくりをめざして

最後に、5000系復刻プロジェクトとSANZEN-HIROBAリニューアルについて、取り組みに参加した担当者にお話を伺いました。今後のSANZEN-HIROBAがどのように魅力あふれる場としてお客さまに楽しんでいただけるのか、展望をご紹介します。

京阪電気鉄道株式会社
車両部 技術課 機械設計担当 係長
城守克典さん

5000系復刻プロジェクトのハードルとなったのが、私をはじめとして車両部内に新造当時を知る社員がほぼいなかったという点でした。そこで、社内の資料や当時の鉄道雑誌などをくまなくチェックすることから始めました。車両部には鉄道雑誌を網羅して保存してあるのですが、その中にデビュー当時の『5000系特集号』もあり、その記述や写真はとても役立ちましたね。全容が見えてからは、古い部品類を調達するのに奔走しました。なんとかそろえられたのですが、お客さまセンターへも「5000系復刻に、この部品がないようなら私が提供します」というありがたいお申し出もあったと聞いています。
できる限りデビュー当時の姿に再現した5000系車両は、当時を知る方にとっては懐かしく感じていただけるのではないでしょうか。一方で、お子さまなどには、今の電車とどんな風に違っているのか?そんなところに注目しながら、5000系車両ならではの工夫や個性を感じ取っていただけたらと思います。

株式会社京阪流通システムズ
企画開発部 リーダー
奥山真貴さん

展示車両をいかにリアルに見せるか。また、お客さまが訪れやすい特別な空間づくりをどのように形づくるのか。この2つに気を遣い、空間演出を考えました。ここに展示してある3つの車両は、実物大のレプリカなどではなく本物の車両です。そこで、ただ設置するだけでなく、広場全体に光と音の演出を効果的に取り入れることで、旧3000系車両と5000系車両が今にも走り出しそうな疾走感をたっぷりと感じていただけるような仕組みを取り入れました。2600系車両に関してはトリックアートと組み合わせ、運転台に入って写真を撮れば運転士さん気分を味わっていただける仕掛けを施しました。
社内で保管している貴重な資料などを定期的に入れ替えて展示するなど、お子さまだけでなく鉄道ファンの方にも喜んでいただけるような企画も展開していきます。また、様々なイベントを開催することで、幅広い層のお客さまがいつもでも楽しめ、そして何度でも行きたくなる、そんな魅力的な空間づくりをしてお待ちしています。

京阪電気鉄道株式会社
経営企画部 部長
道本浩司さん

SANZEN-HIROBAは、これまでも「商業施設に本物の電車がある」という希少性の高い場所でした。しかしながら、より鉄道に親しんでいただけるようなイベントを積極的に展開するまでには至っておらず、その特別なシチュエーションを活かし切れていませんでした。
このたび、テレビカーとして沿線のお客さまに愛された旧3000系車両に加えて、高度成長期のラッシュ時を支えるために独創的な工夫が施された5000系車両、同様に京阪電車の代表的な車両として通勤•通学に活躍している2600系車両も展示に加わることになり、商業施設に3つも本物の電車がそろうことになりました。実際の車両とこんなに間近で触れ合える商業施設というのはあまりないと思います。それは、独創的な発想と技術が活きる京阪グループだからこそ提供できる価値であり、取り組みだと思っています。
5000系車両は可能な限りデビュー当時の姿に忠実に再現しましたが、車体の色については沿線にお住まいの方々には懐かしく思われる方も多いのではないでしょうか。過去に活躍した車両の展示を通して、京阪電車の歩みや魅力を皆さまに感じ取っていただけたらうれしく思います。それとともに、これからの京阪電車の取り組みを発信する場として、また、お客さまとの温かなつながりを築く場として、このSANZEN-HIROBAを楽しんでいただけるようにメンバー全員で知恵を絞り、魅力を高めてまいります。皆さまのお越しを心よりお待ちしております。

5000系の引退から、くずはモール「SANZEN-HIROBA」で復刻されるまでを追った動画をYOUUTBEで配信

2023年4月掲載

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