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こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.07]新しい電車が宇治にやってきた! ~新型車両13000系デビュー~

京阪電車は2012年4月14日(土)から、新型車両13000系20両を宇治線に順次導入しました。
これまでの車両開発で培った技術やノウハウを結集させ、環境への配慮やバリアフリーへの対応、安全性の向上などに主眼を置いて開発された次世代車両13000系。導入計画段階から開発業務に携わった車両部技術課の南昌治さんにお話を伺いました。

13000系運行を開始した13000系

お客さまへの
「サービス向上」がテーマ

いよいよ13000系の運行がスタートしました。

まずは無事に運行を開始できたことにホッとしています。4月14日のイベントにはたくさんのお客さまに来ていただきましたし、上司からのねぎらいの言葉や開発チームメンバーの満足気な笑顔も嬉しかったですね。計画段階から業務にあたっておりましたので、とても感慨深い日となりました。

まずは13000系導入の構想が生まれた理由をお聞かせください。

現在宇治線で営業運転している2600系は、新造から長い年月が経過していますが、丁寧にメンテナンスを行うことで、まだまだ現役で活躍できると考えています。
しかし、バリアフリーに対応したお客さまにやさしく、かつ高効率(省エネ)で環境にもやさしい車両を導入していくことも、古い電車を使い続けることと同じくらい重要であると考えています。このことから、快適性の向上と環境負荷の低減を実現する最新鋭の車両を宇治線に導入し、お客さまや社会全体へ向けた総合的なサービス向上を図ろうと考えたのです。

徹底した品質管理徹底した品質管理のもと、川崎重工業で製作された13000系

「京阪さんは熱心です」と
言われました

仕様検討から製作完了までどれほどの期間がかかりましたか。

2010年から仕様検討を開始し、メーカーの選定、設計、製作と完成するまでの期間は約2年です。車両の製作は今まで京阪の車両を多く手掛けている川崎重工業に依頼しました。2011年秋から製作をスタートして、およそ6ヵ月で完成しました。

製作中における京阪の最も重要な仕事は、仕様・設計通りに製作されているかを検査することです。検査は大きく分けて4つになります。まずは車両の床の基礎となる台枠の検査。次に台枠に側面、正面・妻面と屋根を接合し、車体の本体となる構体の検査。次に配線や配管が内装材などで隠れてしまう前にそれらの状態を確認する隠ぺい部の検査。そして最後に完成した状態をトータルで確認する完成検査という順番です。それぞれの検査で寸法や施工状態などを細かくチェックし、少しでも不安な要素が残らないようにしています。

製作中のエピソードがあれば教えてください。

エピソードと言えるものではありませんが、京阪の検査に臨む体制には特長があるようです。川重さん(川崎重工業)からお聞きした話では検査に京阪ほど大勢の社員で押しかけるのは稀なようです。私も言われるまで知らなかったのですが、一般的には4~5人のところを、京阪は10~20人ほどで検査に行きます。川重さんには“熱心”な会社に見られているようですが、我々からすればそれが当たり前なんです。
大勢で検査に行くのも今に始まったことではありませんが、その理由は「技術の継承」、つまりは若手育成の機会と考えるからです。車両製作の機会は頻繁にある訳ではなく貴重なものであり、若手には検査でどういったポイントをチェックするのかを理解するとともに、こうした経験を積んで次代につなげる何かを感じ取ってほしいと考えています。

「スラッシュムーン」×「ウェッジシェイプ」

エクステリアデザインのイメージ13000系のエクステリアデザインのイメージ。
コーナー部分にエッジを効かせる「ウェッジシェイプ」
連結部分連結部分のカッティング。
オフセット衝突時のパワーを外へ逃がす効果がある

車両の外観デザインについてお話を聞かせてください。

3000系新造時に導入した『風流の今様』という基本デザインコンセプトを継承しています。外観デザインでは、『風流の今様』を具現化するモチーフの“月”をイメージさせた「スラッシュムーン」と呼ぶ円弧形状に加え、新しく「ウェッジシェイプ」と呼ぶエッジをコーナーに効かせました。また、先頭上部にブラックを配し、円弧形状の標識灯からルーフまで連続性をもたせ、グラスエリアをより広く見せることで、ダイナミックなフェイスイメージを演出しています。

さらに、安全性の更なる向上を目指して、種々の車体強度アップを図りましたが、外観からも見ていただけるものとしてはオフセット衝突対策があります。車両連結面間の車体コーナー部にある骨組み(隅柱)を面取り形状(三角形状)に変更し、万が一のオフセット衝突時に車両間の衝撃を逃がし、車両が相手側車両に食い込むことを防ぎます。
ウェッジシェイプを新たに採用し、エッジを効かせたことで、通勤車らしい“機敏で軽快な印象”を表現できたと思っています。また、安全性も向上させることができましたので、2008年に新世代車両として誕生した3000系車両の良い面を継承しながらも、新たな改良を加えた車両を完成できたと思います。

出入口に設けられたオレンジ色の配色出入口に設けられたオレンジ色の配色は、出入口の識別を容易にするためのもの 抹茶ドーナツを連想させる吊り手抹茶ドーナツを連想させる吊り手が、沿線の「宇治」「京都」感を演出

「抹茶ドーナツ」にご注目

それでは車両内部についてもお話を聞かせてください。

まずは、バリアフリー対応の充実がポイントです。車両新造時や改造時のバリアフリー対応の基本的な考えである、各車に車いすスペースを設置したほか、液晶式車内案内表示や非常通報装置などを搭載しています。また、新たに充実させた部分としては、荷棚の高さを低くしたほか、乗降口の扉端部と足元にオレンジ色のラインを配置しました。周囲とのコントラストを確保することで、視力の弱い方にも出入口が分かりやすく見えるようにしました。

次に内観デザインでは、外観デザインと同じく『風流の今様』の基本デザインコンセプトをちりばめています。その一つであるカラーコンセプトでは、座席シートと吊り手に鮮やかな“萌黄色”を配置し、活動的な生命感を与えつつ、シート柄の枯山水模様と組み合わせで沿線の「宇治」「京都」感を演出しました。他にも、壁と床にコントラストのある2色の配置や柄に特徴を持たせ、外観デザイン同様に“軽快感”を与える仕上がりにしました。

VVVFインバータ制御7000系以降の車両に採用されているVVVFインバータ制御。
13000系では極低速域まで回生ブレーキを使用できる装置を搭載

環境にも配慮された車両とのことですが、内容を教えてください。

アルミ合金製の車体とVVVFインバータ制御装置を採用したことで、軽量化と高効率化により従来の2600系と比べて約35%の電力量を削減します。導入する20両の合計では、年間約60万立方メートルのCO2排出を削減できる計算になります。地球温暖化対策は社会全体の課題ですから、車両開発時には注力すべきポイントの一つと考えています。

国道を走る13000系川崎重工業から寝屋川車両基地へ向けて
深夜の国道を走る13000系

真夜中の国道を走った13000系

製作が終わってから運行を開始するまでの流れを教えてください。

川崎重工業で車両が完成すると、鉄道車両専用のトレーラーを使って道路輸送されます。道路管理者および警察の許可を得て、京阪の車両基地まで真夜中に運搬されます。先導車に従われて、その光景はまさに壮大です。また、電車が線路上ではなく、道路を走っているかのように見えるため、異様で珍しい光景でもあります。
交差点を曲がるたびに警備員が誘導し、一般ドライバーに極力ご迷惑をおかけしないよう注意し、安全第一で運搬します。
その後、そのようにして京阪の車両基地に運搬された車体を、別に運搬された台車に乗せて結合し、あらゆる分野の社内検査を行います。社内検査をクリアすれば、最後に本線でのテスト走行を経て営業運転が可能となります。

より多くのお客さまに性能を体感してほしい

初発駅となった中之島駅初発駅となった中之島駅には多くのファンがつめかけた

4月14日のデビューイベントでは、たくさんのお客さまがご乗車してくださいました。

デビュー当日は発車駅となる中之島駅の改札口に発車前から乗車を希望されるお客さまで長蛇の列ができ、その光景を見たときには感無量な気持ちでいっぱいでした。中之島駅から発車した時には、車内は多くのお客さまでいっぱいの状態で、またホームにも撮影を希望される多くのお客さまに見送られる状態で、13000系のデビューイベントを多くのお客さまに盛り上げていただいたと感謝しています。

13000系はデビューしたばかりですので、今後も多くのお客さまにご利用していただきたいと思います。その際には是非、快適性やデザイン性に着目してください。きっとご満足いただけると思います。