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こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.46]人が守り、支え、築く安全安心。 ~京阪電車の安全安心は、一人ひとりの技術や想いが支えています~

京阪電車では、お客さまに安心してご利用いただくために、安全を確固たるものにするべく日々取り組んでいます。電車の運行はもちろんのこと、ホームの安全確保にもエキスパートたちの技能と知恵が活かされています。2022年1月、京阪電車で初となる可動式ホーム柵の使用が京橋駅で開始されました。設置工事への密着取材を通して、京阪電車の安全安心への取り組みをあらためてご紹介します。

5000系車両引退、ホーム柵設置へ

日本初の5扉車であり、ラッシュ時以外は2扉を締め切り、扉上部に格納した座席を下降させて座席数を増やすことができるユニークさで注目された5000系車両。1970年の登場当時から、5扉が開閉することで乗降がスムーズになり、通勤ラッシュの定時運転に大いに役立ち、多くのお客さまから長年にわたりご好評をいただいてきました。しかし、5扉では可動式ホーム柵への対応が難しいという課題があり、2021年9月に引退。それを機に乗降客数が一番多い京橋駅での可動式ホーム柵の整備に向け、検討に着手しました。

運転士、車掌、駅係員に向けて安全運用のための研修を実施

京阪電車では、実車両を使用した訓練や異常時対応訓練(VOL.25 第16回総合事故復旧訓練の1日をレポート)など、安全安心の徹底に向けてさまざまな研修を行っています。可動式ホーム柵の導入に際しても、事前に直接お客さまをご案内する車掌や運転士、ホーム柵を扱う駅係員全員が参加し、実際のホーム柵を用いて入念な研修を実施しました。

京橋駅1番線可動式ホーム柵搬入工事に密着

京橋駅1番線に可動式ホーム柵が搬入されたのは2021年12月4日。ホーム柵は、その数日前に淀車庫で車両に積み込まれ、一旦は寝屋川車両基地へ移動、そこから京橋駅へ運ばれてきました。最終電車を見送った後で、いよいよ設置工事の開始です。京橋駅のホームの基礎工事などはこの日までに完了しており、据え付けの日を迎えました。

点字ブロックについては、バリアフリー整備ガイドラインに基づき、これまでの位置から可動式ホーム柵の各開口部の全幅にわたるように1枚1枚貼り替えられました。ホームの停止位置の表示方法に加えて、柵の設置に伴い整列乗車の並び方も合わせて見直すなど、ホーム柵設置にあたっては運転部門をはじめ工務・電気・車両の各部門が協力して検討し、実行してきました。

この夜、作業に携わった作業員は60名以上。一人ひとりが始発までの限られた時間内で手際よくプロフェッショナルに作業を進め、可動式ホーム柵の設置が終了しました。同様の工事は約1カ月後に2番線ホームでも実施されました。

試験運転を繰り返し、徹底的に安全を確認

可動式ホーム柵の設置完了後は、運用に向けて試験運転を繰り返し、安全確認を徹底しました。実際の車両を走らせて行う総合試験を各ホームで2晩に分けて実施。運用に向けて停止位置、開扉位置の確認など最終チェックを入念に行いました。とりわけ京阪電車の場合、車種ごとにドアの数が異なるため、停止位置の調整などに高い運転技術が求められます。特に通勤・通学時に多くのお客さまにご利用いただくライナーは、偶数号車のみ扉の開閉を行います。そのため、車両部では車両側からホーム柵の制御盤へライナー識別信号を送る装置をオリジナルで製作。それらの機器が問題なく作動するかも含め、総合試験の日は関係者が一堂にそろい、試験を実施しました。こうした確認作業を経て、1番線ホームは2022年1月30日に、2番線ホームは2月20日に使用開始を迎えました。

京橋駅に可動式ホーム柵が設置されるまでの動画をご覧いただけます

人が守り、人が支え、人が築く京阪電車の安全安心

可動式ホーム柵については、京阪電車の関係者のほか、京阪電車の設備工事の施工管理および保守管理を請け負う株式会社京阪エンジニアリングサービス(以下KES)が導入から設置まで関わっています。現場を担当した方々に、苦心した点や工夫を凝らした点、そして安全安心についての想いを聞きました。

京阪電気鉄道株式会社
工務部 技術課 小林 豊さん

縁の下の力持ちとして
ホームの安全を支え、見守る

工務部は、可動式ホーム柵を据えるホームの整備に関わりました。導入にあたって最大の課題は、既存のホームがホーム柵の重量に耐えうるかどうかでした。建設当時の資料から補強の有無について検討を重ねた結果、幸いにもホームの荷重条件内ということで、特に補強をする必要はありませんでしたが、設置に伴うさまざまな工事を実施しなければならず、そうした作業を半年以上かけて進めました。具体的には、点字ブロックの敷設替えやホームと列車の段差・隙間を縮小する工事などを行いました。また、ホーム上にホーム柵を取り付けるために設置したベースプレートや電線穴は、ホーム柵設置の日まで鉄板にて養生をしてきましたが、京橋駅はご利用になるお客さまが多いので、養生テープが剥がれるなどして万が一にも転倒事故につながることがないように、作業予定がない日も足を運び確認を行いました。我々は普段、直接お客さまと接する部署ではありません。しかし、鉄道の安全安心を土台で支える線路やホームを最良に保つことでお客さまの安全と安心を守っている、その誇りをもって取り組んでいます。

京阪電気鉄道株式会社
電気部 電力課 電力設計係 廣田寿孝さん

全車種で快適に利用できる
可動式ホーム柵を実現するために

電気部は、ホーム柵の設置にあたりお客さまの日々の利便性と安全で安心できる利用環境をしっかりと確保しながら、どのような形で導入をするべきかを念頭に調整に調整を重ねて進めてきました。可動式ホーム柵は多くの鉄道会社で既に採り入れられていますが、設置にあたっては京阪電車の独自性でもある車両のバラエティーの豊かさに対応できるシステムを構築しなければなりませんでした。8000系のように2扉もあれば、プレミアムカーは1扉、他の車系は3扉が基本です。さらに8両編成か、7両編成か、6両編成か、それらをすべて可動式ホーム柵に判別させるのは困難を極めた作業でした。電気部が担当しているのは主に可動式ホーム柵本体とそれを制御するための設備ですが、特に可動式ホーム柵本体と各種センサーの配置についてはすべての車両で正常に動作するよう調整しなければならず苦心しました。可動式ホーム柵は、お客さまに駅のホームをより安心してご利用いただくために重要な役割を担っています。これからはこの設備が安定して稼働するよう維持管理に努めていきたいと考えています。

株式会社京阪エンジニアリングサービス
鉄道電気部 工事担当課長 杉本貴弘さん

安全安心とともに使いやすさを
保守管理面でも追求

KESでは、可動式ホーム柵の製造メーカーと設置業者、それと京阪電車を繋ぐハブの役割を担い、工事現場の施工管理全般を行ってきました。ホーム柵設置に向けた工事は、2021年の5月からスタート。最終電車を見送った深夜に工務部、電気部と力を合わせて夜を徹して基礎工事を進めてきました。設置に際して苦労したのは、天井高です。京橋駅の場合、天井が非常に高いということがあり、可動式ホーム柵と連携したセンサー機器を取り付ける工事をするため高所作業車を毎晩出し入れしなければなりませんでした。京橋駅は繁華街の真ん中にあり、道幅も決して広いとは言えないので、作業車の運搬が毎日大変でした。あとは、どうしても夜間作業のため始発までの限られた時間内での緊張感のある作業となりまた。可動式ホーム柵自体は、多くの鉄道会社で使われており珍しいものではないですが、京阪電車ならではの使いやすさや確かな安全性を保守管理の面でも追求していきたいと考えています。

お客さまの安全安心ために、
さまざまな取り組みを実施しています

可動式ホーム柵の設置以外にも、京阪電車は「安全安心」の基盤のさらなる強化、そして、すべてのお客さまが安心してご利用いただける施設・環境づくりをめざして、さまざまな取り組みを実施しています。京阪電車の安全管理業務に携わる安全推進部・後藤さんに最新の取り組みについて話を聞きました。

今日は総合研修センターにお邪魔しましたが、新入社員研修が行われていたのですね。

「2021年度新入社員研修」を実施していました。鉄道従事員としての意識をしっかり認識してもらい、京阪電車の社員として必要な基礎知識や基礎スキルの習得のほか、災害時などに使命感をもって対応するマインドセット、お困りのお客さまへのお声がけや介助などに関する知識とスキルを身につけてもらうように、少人数体制で座学と体験型実習を行いました。

目の不自由な方のご案内方法を見学しましたが、実際に役割を当てて交代で体験してみるのですね。

そうです。京阪電車では、すべてのお客さまが安心して、安全に駅と電車をご利用いただけることをめざしています。そんな中で、お手伝いを必要とするお客さまに対しては、常にお手伝いされる側のお気持ちを尊重し、相手の立場に立ったサポートをするよう指導しています。そのためには、実際に自身が経験し、実感することが何より大切です。目のご不自由なお客さまをお手伝いする際に、歩く速度が健常者にとっては普通であっても引っ張られるような印象を持つ場合があります。それは、目隠しをしてみてリアルに体感してみないとわからないものです。車いすをご利用のお客さまについてもしかりで、実際の体感研修を通して、どのようにお声をかけたら安心していただけるか、声のトーンはどうか?など全員で実感しながら進めています。

全社員に向けての基礎研修も進めているとか?

「鉄道従事員基礎研修」と言いまして、研修内容は「2021年度新入社員研修」とほぼ同様です。1回あたり8名程度の少人数制で行い、2020年の11月から2021年の6月までに60回実施しましたので、合計で約540名が研修に臨みました。

全社員ということは、お客さまに直接関わることのない、技術部門や事務部門の方達も同様にでしょうか?

京阪電車の基本理念と人物像を体現する社員の養成を目的としていますので、京阪電鉄に籍を置く管理職以下の全社員に順次実施しています。お客さまの期待にお応えし、安心してご利用いただける京阪電車であり続けるためには、社員全員が同じ方向を向き、お客さまの大切な命を預かる輸送機関であるという鉄道会社としての使命感を全員が共有する必要があります。そのことを、研修を通じて改めて徹底させることを目的とし、今後も継続して取り組んでいきます。

そう言えば、全社員必携のワッペンがあるそうですね。

全社員が一人2枚所有しています。京阪電車利用時に何かトラブルやアクシデントがあった際には、これを胸に貼って乗務員に申し出るように伝えています。2018年の大阪府北部地震の際にも長時間電車が止まってしまったのですが、乗り合わせた社員がワッペンを貼って乗務員とともにお客さまのサポートにあたったと報告を受けています。

京阪電気鉄道株式会社
安全推進部 後藤洋一さん

他にも、安全安心のために実践していることはありますか?

万が一の事故や災害で電車が被害を受けても迅速に対応できるように備えておく訓練や、電車内でのテロ行為に備える訓練として「総合事故復旧訓練」「鉄道テロ対応訓練」「事業継続計画(BCP)訓練」などを毎年必ず定期的に実施しています。いざという時にお客さまの安全を確保し、迅速に誘導するために、関係機関との連携なども訓練して備えています。

最後に、後藤さんは研修でどのようにお客さま対応をすべきであると指導されているのでしょう?

まず、自分の家族だったらどうするか?と考えて行動して欲しいと伝えています。自分ごととして捉えること。そうすれば、お困りのお客さまがおられた場合にも、自然となすべき行動に繋がるはずです。形式にとらわれず、やさしい案内を心がけて欲しいといつも伝えるようにしています。

2022年2月掲載

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