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こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.36]検査を通じて車両の安全を守り抜く。 ~故障を未然に防ぐために定期点検を行う検車係を追って~

京阪線は距離にして69.1kmです。特急電車は大阪・京都間を1日およそ8往復、普通電車はおよそ4往復します。1日あたりの走行距離は特急電車で約800km、普通電車でも約400kmになります。365日休みなく、これだけの距離を毎日安全に走行するために、電車は定期的に厳格な検査をし、故障が発生しないよう入念なメンテナンスを行っています。それはいわば病気を未然に防ぐための、電車の健康診断。その作業を担うのは車両部車両課の検車係です。電車の健康を守るドクターともいうべき検査員たちのプロフェッショナルな作業の様子を今回はレポートします。

検車係が受け持つ2つの検査業務に密着

検車係が受け持つ検査は、10日以内の周期で車両の主要部分を目視でチェックする列車検査と、3か月以内の周期で車両の機器動作をチェックする状態・機能検査の2つ。普通の健康診断と人間ドックのような違いとでもいえばいいでしょうか。共通するのは、いずれも車両を連結したままの状態で検査する点です。
このほかにも、4年または走行距離が60万kmを超えない期間で行う重要部検査や、8年以内の周期で行う全般検査があり、これらは電車を部品レベルまで分解する大がかりなもので、いわば大手術。この場合は手術室に運ぶように検車庫ではなく車両工場で行います。
今回の取材では、寝屋川車両基地にある検車庫で行う列車検査と状態・機能検査に密着しました。

電車の安全を守るために、まず自分たちが安全であらねば

検車係は総勢52名。電気関係の装置を点検する電気担当と、台車や車体、空気関係の装置を点検する機械担当の2チームが協力して検査を実施します。1日の仕事は、朝礼とラジオ体操からスタート。車体の屋根に上がったり、台車の下にもぐりこんだりと身体を使った作業が多いため、体操によって体をほぐし、怪我しないよう備えます。始業前には、その日取り組む作業で危険なところはないかKY(危険予知)活動を必ず実施。過去の作業で危なかった事例や体験などに基づくヒヤリ・ハットの情報を全員で共有し、安全に対する意識を徹底させてから作業に臨みます。

屋根上から床下まで入念に確認する状態・機能検査

状態・機能検査では、電気担当と機械担当が一斉に車両を取り囲んで手際よく確認していきます。電気担当はATS(自動列車停止装置)などの保安装置や制御装置、パンタグラフ、扉の開閉装置、照明、クーラー、放送装置に至るまでを丹念にチェック。機械担当は車体そのものと車体を支える台車やブレーキ装置などを担当します。
最近の電車は、高性能化がどんどん進んでいるため電子機器が多く内蔵されています。スマホなどもそうですが、電子機器は暑さ・寒さに弱い特徴があるため、最近の異常気象下では検査にも余念がありません。機器のカバーを開けて内部まで細かく確認。異常がないか隈なく調べ、最良の状態に整えます。

電気担当は、屋根に昇ってパンタグラフの上昇圧力を測定、バネの具合いをチェックして、油をさすなどメンテナンスを十分に施し、架線と接触する板がすり減ったときは取り替えます。また、電気回路の絶縁測定なども綿密に行います。
一方、機械担当は台車の下にもぐりこみ、床下から異常がないかハンマーとライトを持って点検。ボルト部分をハンマーで叩いて反響する音で異常を感知します。列車を止める役目を果たすブレーキ装置の部品は摩耗度合いを確認し、安全を確保するため早い段階で取り替えます。また、車輪の形状にも注意を払い厚さや高さなどを測定。走り続けることで次第に摩耗し、すり減った車輪は、放置すると騒音の発生などにつながるためベストな状態かを確かめます。

新人はこの状態・機能検査で検査方法を学ぶ

検車係では、新入社員はまず状態・機能検査を担当し、約3年かけて先輩からみっちりと検査の基本を学びます。例えば前述の打音検査、これは経験を要するもので新人には真似のできない、ベテランならではの匠の技です。ボルトはきちんと締まっていると、叩いたときにキーンと澄んだ高い音が出ますが、緩んでいると鈍い音しか出ないとか。音の微妙な違いを聞き分けるプロの耳が、故障に繋がる不具合を早い段階で未然にキャッチします。こうした現場でしか磨くことのできない経験に基づく高度な職人技は、ベテランから若い世代へと確実に継承されていきます。

プロフェッショナルな技量が真価を発揮する列車検査

もう一方の列車検査は、車両の姿そのままで主要部分を目視などでチェックしていきます。機器の内部まで、じっくりと検査する状態・機能検査より、むしろ職人の勘どころが求められるのです。迅速さと正確さが同時に求められるために五感をフル活用しなければなりません。いつもと違う音が出ていないか、ニオイに気になるところはないか、パッと見てゆがみや損傷など変化はないか、多くの項目を瞬時に確認していきます。それが可能なのは常に車両と向き合い、最良の状態を熟知しているプロフェッショナルだから。
いずれの検査とも、点検・保守を終えた後は別の検査員が再確認する二重チェックを行い、決して不具合などの見逃しがないよう最善の検査体制を敷いています。

お客さまの立場にたった検車係をめざしています

検査の密着取材後、車両部車両課検車係の金丸慎二係長にお話を伺いました。

この7月から新体制になられたとか。組織はどう変わったのですか?

「これまでは淀車庫と寝屋川車両基地の2か所で点検していましたが、組織を見直して寝屋川車両基地に統合しました。その一方で、営業列車の故障対応などに迅速に応えられるよう途中駅に検車係員を配置する体制となりました。これまでは何かトラブルが発生すると、それぞれの車庫から出向いていたのですが、駅を拠点にすることでより迅速な対応が可能に。運転関係係員には安心度が増したと喜ばれています」

急な故障にもより即応力のある体制になったのですね。

「はい。例えば空調機器が急に効かなくなったり、扉に不具合が生じたときは、途中駅にいる係員が即座に駆けつけ、その場で判断し、対応しています」

電子機器が増えて、検査やメンテナンスのやり方は変化しているのですか?

「確かに、電子機器化によってメンテナンス方法は変化しています。最近の車両では手作業で削ったり、部品を取替えたりといった作業が少なくなるなど点検個所は減少しました。しかし台車の歯車や構造など、変わらないところもたくさんあります。そこでは昔ながらの職人技が活き、今まで通りに検査を支えています。ベテランは経験的に、ここは微調整が必要とか、ここは念入りにチェックしなければ…などを知っているんですね。だから早め早めにケアができ、故障を未然に防げます。現在は新型車両と旧型車両が混在しているので、メンテナンスも両方の知識が必要です。それだけに検査員は職人技の勘どころを学びながらも、一方で日々新たな知識を取り入れています。新旧の車両と向き合い、車両を知り尽くしたオールラウンド・プロフェッショナルが検車係だと自負しています」

金丸係長が検査作業をされる上で、とくに留意されていることは何ですか?

「我々検査員は、電車の安全安心を支えるための要員です。ただ検査は危険の伴う作業でもあります。安全を支えるはずの私たちが危険な目に遭っては本末転倒です。そのために検査作業の前にはKY(危険予知)活動を必ず実施し、担当する作業にどんな危険が隠れているか、をメンバーに発表してもらい、全員で共有しています。また危険を伴う可能性があったときなどは、「ヒヤリ・ハット+事故の芽シート」を作成してもらい、その体験も全員で共有しています。誰かの身に起こったヒヤリとした経験は、ほかの誰かにも起こりうること。情報をみんなに伝えることで、安全に対する意識を全員で一緒に高めていく。それが検査に臨む大切な第一歩だと考えています」

■車両部 車両課 検車係 金丸慎二係長

最後に、今後このような検査を目指したいという目標などありますか。

「“お客さまの立場にたった検査”を目指していきたいですね。例えば、つり革にあるネジ、ここも緩んでいないか検査時にチェックするパーツです。その際に、ただ締めればいいというのでは足りないと思うんです。つり革はお客さまの手に触れる箇所、もし締めすぎたネジの先が出ているとお怪我をされるかもしれません。そこまで想像力を働かせる検査を行うことで、一歩踏み込んだ京阪電車ならではの検査クオリティになると考えます。お客さまの安全安心のために、ならばネジの先を削って丸くしておこうかとか、新しいものに替えておこうと自然と行動できます。お客さまの立場にたった安全安心の視点をもって、最善の検査を常に追求していきたいですね」

環境負荷を減らすために、定期的に車輪を削正しています。

カーブの多い京阪電車では、車輪の形状にもひと工夫しています。当社の車輪は、レールと接する表面をやや楕円状にすることでカーブを曲がりやすいように仕上げます。この車輪形状のおかげで、スムーズな走行を実現。車輪の表面は走行年月に応じて摩耗し形状がくずれてきます。定期的に車輪を削り直し形状を維持することで、乗り心地の向上や走行音の低減といった環境対策にもつなげています。