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こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.35]安全の根幹、信号設備を見守る目。~信号設備の安全と安定を支えるエキスパートたち~

電車はその名の通り、電気を動力として走ります。運行以外でも、駅の案内表示器や空調設備、照明など、鉄道施設のあらゆるところに電気が使われています。それだけに、電気設備が日々正確に動作するように点検・保守する業務は欠かせません。京阪電車の電気関連業務を担当するのは電気部。なかでも電車の運行が安全に、スムーズになされるよう網の目のように支える信号機や踏切、列車運行管理システムなどの信号設備を点検・保守するのが電気部信通課です。今回は同課の京都信号係に密着。安全で安定した運行を支える陰で、ぬかりないメンテナンスを預かるエキスパートの姿をレポートします。

厳格な自主点検サイクルを
定める京阪電車

信号や踏切などの重要設備は、国の法律によって点検サイクルが細かく定められています。しかし京阪電車では、独自に厳格な自主点検サイクルを設定。1年間みっちりと点検・保守のスケジュールが組まれています。昨今増加する大雨などの自然災害や突発的なアクシデントによる緊急事態対応も想定し、年間作業計画は綿密に調整されています。機器の更新など大きな工事は電車の運行時間中には行えないため、夜間作業の頻度が高いのも信通課の特徴。取材日には、丹波橋通踏切道の日中点検が予定されていました。

作業の1日は危険予知トレーニングから始まる

工務部保線課の保線業務に密着したレポート(Vol.33 電車の安全運行を根底で支える保線業務)でもご紹介しましたが、どの部署においても電車の運行時間中に軌道内で業務を行う場合、電車通過のタイミングを計りながらの作業となるため、危険と隣り合わせ。加えて信通課の場合には、信号機の点検等は高所作業となることがあり、墜落の危険も伴います。電気系統を触る関係から感電のリスクも避けられません。そうした危険を回避して事故なく正確な作業へつなげるために、現場へ赴く前には必ず全員で危険予知トレーニングを実施。また、踏切作業では、踏切を利用される方々や車両にも目を配らなくてはなりません。朝のミーティング時に注意点を挙げ、全員で繰り返し唱和して安全への意識を共有し、現場に出発となります。

踏切に息づくさまざまな安全対策

踏切には遮断機や踏切警報灯のほか、遠くからでも踏切の存在がわかるよう、警報灯を高所に設けたオーバーハング警報灯、自動車や人の立ち往生を検知し、付近の電車に停止するよう知らせる踏切障害物検知装置など、実に多くの安全設備が備えられています。とりわけ今回取材した丹波橋通踏切道は駅に隣接し、踏切も長いため、障害物を検知する送受光器は14組28基にも及びます。
現場に到着すると、さっそく作業に取りかかります。電車の運行の妨げにならないよう、また踏切をご利用になる皆さまの通行の邪魔にならないよう心がけながら、迅速かつ丁寧に検査・確認。警報機のレンズは視認性を落とさないよう磨き上げます。

幾重にも安全が担保されている信号設備

信号機には、3色を駆使して運転士に最大5種類の制限速度を報せるものや、前方の踏切の遮断状況を表示するものなど、役割の異なるものが必要に応じて駅や線路に設置されています。いわば運転士の道しるべとなる信号が正常に作動するのか、また、鮮明に表示されているのかを点検・保守するのも重要な役割です。ちなみに、信号機の電球のフィラメントはすべて二重化されています。たとえ1つのフィラメントが切れても信号機が消灯することはなく、1本が断線した情報はシステム上で把握することができ、安全が担保されるように万全の体制が敷かれています。また、信号設備のLED化を進め、省電力化に努めることで環境負荷の低減にも尽力しています。

複雑なダイヤを支えるポイントも厳しいチェックを

電車の進路を制御する転てつ器の動作確認も大切な任務のひとつ。いわゆる“ポイント”と呼ばれるもので、線路が分岐・合流している箇所に設置され、車両を目的の線路に誘導する役割を担っています。万が一にも電車の通過時に転てつ器が動いてしまわないような仕組みを備えており、高い安全性を誇っています。電圧を調べ、故障部位や異常がないか厳しく目を光らせます。もし電圧に異常があれば、どこかで断線している可能性があります。そうした勘どころは現場で経験を積むことによってのみ得られます。

コンピューターシステムにも
通じるスペシャリスト

信通課の業務は、実地点検だけでなく、システムの確認まで幅広くカバーします。信号機を制御する装置が設置された「信号機器室」では、電子連動装置やATS(自動列車停止装置)に不具合がないかもチェック。この「信号機器室」は電車の運行を支えるいわば心臓部。ここがダウンすれば運行もストップしてしまうため、より頑強な構造になっています。現場では職人の勘と技が求められ、一方で最新のコンピューターシステムにも精通する。それが電気部信通課のスペシャリストたちです。

信号システムとは
心臓と全身を巡る血管のように大切なもの

1日の取材を終えて、最後に電気部 信通課 京都信号係の津田隆史係長にお話を伺いました。

1日密着させていただきましたが、息の合った素晴らしいチームですね。

「ありがとうございます。信号システムは、身体に例えるなら心臓と全身を巡る血管のようなもの。少しでも信号に不具合があれば、電車は走ることができません。それだけに緊急時にはチームの心をひとつにして迅速に動く必要があります。だから日頃からコミュニケーションを第一に、勉強会や自主訓練を頻繁に行い、意見交換も活発に行うよう心がけていますが、その成果でしょうか」

■踏切支障報知装置

巨大な「信号機器室」にも驚きました。

「今はデジタル化が進み、あらゆる鉄道電気施設は巨大なネットワークシステムの一部になっています。そういう意味では電気部が関わる範囲は無辺に広がっていて、保全する私たちも能力を常にアップデートさせなくてはいけません。大変ですが、とてもやりがいのある仕事です」

IT化が進むと運行の安全を守るのもやがて自動化するのでしょうか?

「いえ、どんなに進化したシステムであっても運用するのは人。安全を守る最後の砦は、やはり人です。システムは不具合が起きてから反応するものです。でも我々は、不具合が起きる前に経験を生かしてその兆候を察知し、未然に防ぐことができる。焦げ臭い匂いがするぞ、色がおかしいぞ、と五感をフル活用した予測は、人にしかできないことです。だから実際に現場に足を運び、自分の目で確認することが不可欠です。若手が先輩と一緒に行動することで、技術の継承にもつながります。それは今後も変わらず続くでしょう」

安全のためには「人」の力が欠かせないんですね。

「はい。それと車両内でも駅でも踏切でも、お客さまが先に事故や異常を発見される場合があります。ですから、お客さまのご協力なくして安全は成り立ちません。海外からのお客さまが増加していることも踏まえ、京阪電車でも“踏切支障報知装置”の非常ボタンに英語表記も加え、目立つように刷新しました。踏切事故を少しでも減らすため、踏切付近で何か異常を発見されたら、迷わず押していただきますよう、ご協力をお願いいたします」

■踏切支障報知装置

安全という運行の根幹を担う業務に就く
その自負をもって任務にあたる

■電気部 信通課 津田隆史係長

津田さんは入社35年ということですが、ずっと電気部ですか?

「いえ、途中4年間は駅で勤務しました。お客さまのすぐそばで働くというのは、技術畑でシステムとにらめっこしていた者からすると貴重な経験でした。一例を挙げれば、ひとたび電車が遅れたらお客さまにどれだけご迷惑をおかけするか、振替輸送の手続きや延着証明書の発行など数々の対応もある。頭ではわかっていましたが、電車は遅らせてはならない乗り物だと身に染みました。多くのことを学び、人間関係も格段に広がりました。このことは今もとても役立っています。だから若手たちにもできるだけ幅広い業務経験をさせてあげたいと思います」

若手の方々に、安全性向上のために伝えているモットーなどありますか?

「危険を伴う仕事ですので、体調管理はしっかりするよう指導しています。一方で仕事については、これだけは自分は負けないという得意分野を作りなさいと勧めています。私自身も、京阪電車の運行を管理するシステムであるADEC(自律分散式列車運行管理システム)のことは誰よりも詳しい自負があります。得意分野を持つ者が集まれば、チーム力は飛躍的にアップします。チーム力が上がれば、安全性もおのずと向上する。それはそのまま運行の安定とお客さまの安心につながっていきます。やがて電気部だけでなく、京阪電車全体のサービス向上として体現されます。一見、地道な作業ですが、京阪電車の安全と安定運行の根幹を支えている誇りと自負をもって任務にあたって欲しいと、いつも若手には伝えています」

踏切道のさらなる安全性向上のために
~2次元レーザーレーダーを用いた踏切障害物検知装置の実証試験がスタート!~


■既設の踏切障害物検知装置
■実証試験中の踏切障害物検知装置 ※設置位置、検知範囲はイメージです。

今回取材した丹波橋通踏切道では、2次元レーザーレーダーを用いた新しい踏切障害物検知装置を設置し、2018年2月より実証実験を開始しています。これにより踏切道内の水平面エリアの検知精度が高まることに加え、踏切道の出入口では垂直方向の検知も可能に。実質3次元検知と同等の性能を発揮し、踏切道内の自転車、車いす、歩行者の検知性能が飛躍的にアップして安全性向上に役立つと考えています。実証実験終了後、成果を分析し、2018年度下期以降の本格稼働をめざします。

2018年5月掲載

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