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こころまち つくろう 活動レポート

[こころまちつくろう 活動レポート Vol.11]「安心、安全、そして快適な明日をつくるために。」~京阪本線京橋駅分岐器構造改良工事(保線作業)~

(間もなく2番線に、深夜急行、樟葉行きが8両で到着します。黄色または緑の乗車位置、丸印のーーー)

京橋駅を午前0:27に発車する深夜急行が大阪方面からやってくる頃、京都方面のホーム先端には、ヘルメットを被った大勢の作業員のが集まっていました。家路を急がれるお客さまを乗せた深夜急行を見送り、直後の萱島行き最終電車も京橋駅を発車。お客さまの声も、アナウンスも、電車の音もない、しんと静まり返ったプラットホームで、安全を確認した後、彼らは線路へ降りて行きます。

「保線作業」と呼ばれる線路の定期的な点検、保守作業のうち、レール交換などの時間を要する作業は、電車が運行しない、真夜中に行われます。この日の保線作業は、京橋駅から京都方面へ約100m付近にある線路が分岐するポイント部の「トングレール」の交換。真冬の冷たい小雨が線路を打つ午前1:00、京阪電車の安心、安全、そして快適な乗り心地を支える京阪電車の保線作業に密着しました。

01:00
「トングレール」の交換工事着手。

1両30トン前後の重量の電車が1日に約800回も走行する線路は、電車の負荷や衝撃によって、寸法の変位や部材の摩耗が生じます。これらは、時が経つと電車の乗り心地や安全性を損なう原因となるため、保線担当者達が日々の線路巡視を欠かすことはありません。実際に線路上での分岐器のチェックは2日に一度。電車の運転室に同乗してチェックする列車巡視は毎日行われています。こうした毎日の積み重ねが、長年技術と安全で評価を得る京阪電車を支えています。

今回の「トングレール」の交換は、電車が分岐器を通過するときの周辺環境への影響を低減する目的で行われました。作業員の構成は、保線作業チームが16名、信号作業チームが7名の合計23名。交換するトングレールの重さは、1mあたり50kgもあり、レールには信号機を制御する軌道回路の電流が流れています。終電から始発までのわずか数時間で、それぞれのチームが協力し、安全に、そして確実にすべての作業を終えなければならないのです。

作業前の分岐器は、関節ポイントと呼ばれ、「トングレール」後端のヒール部に“継ぎ目”が存在していました。このわずかな“継ぎ目”こそ「ガタンゴトン」と鳴る電車通過時の騒音・振動の原因。今回新しく導入するのは弾性ポイントと呼ばれ、トングレールに弾性部分を設けてレールの“たわみ”を利用してポイントを転換します。そのため、構造上、騒音・振動の原因だった“継ぎ目”がなくなるのです。

02:30
「工務部安全衛生パトロール」が見守る中、慎重に作業を継続。

午前2:30。インパクトレンチやレール搬送機の音に混じって、作業に没頭する彼らのかけ声が線路上にこだましています。ポイント部は構造が複雑な分、一人ひとりが構造を理解して慎重に作業せねばなりません。また、重たいレールを搬送機で運ぶ際も、複数の作業員が声を掛け合って互いの安全を確認しながら迅速に行います。その模様を「工務部安全衛生パトロール」が見守られていました。「安全衛生パトロール」とは、京阪電車が実施する多くの安全管理業務の一つで、こうした保線作業現場の巡回を通じて、作業ルールを遵守し、安心・安全に実施されているかを複数の眼でチェックしています。各所で行う作業の安全を管理するために、日夜巡回確認するのも彼らの使命です。

新しいトングレールが線路上に配置され、作業は後半戦にさしかかります。前後のレールとの接合、「レールボンド」と呼ばれるレールの継ぎ目を電気的に接続する銅線の溶接、そして、交換時に一時解体した「トングレール」を転換させるための「電気転てつ機」という機械の組立て作業。一つひとつを的確に行い、工程は設置したトングレールの実測という最終段階に入りました。安全な運行のためには、ミリ単位の誤差も決して許されません。保線作業チームのかたわらでは、信号作業チームも信号機の試験点灯に向けた作業が進められています。

04:00
黙々と作業を続け、無事に工事完了。

終了予定時刻は午前4:00。黙々と作業を続ける彼らに、徐々に始発電車の走る時刻が近づいてきます。

エピローグ

翌朝の通勤ラッシュ時にも、京阪電車はいつものようにご利用になるお客さまを乗せて定刻通りの運行を続けていました。当然、昨夜に京橋駅付近で行われていた保線作業をご存知の方は、少ないと思いますが、こうした線路の安全に関する細やかな改善の積み重ねこそが、京阪電車とお客さまとの明日を支えているのです。